2008年11月6日木曜日

能楽堂で「人間動物園」の前夜祭

エンジン01文化戦略会議が名古屋で始まりました。エンジン01とは、「異分野の専門家が自由な意思を持って集まり、相互に学び合い、新時代の文化を創造していくこと目的とし、この目的を果たすための活動を行う上で、公正と無私の心を基本としている」活動です。無私の心とは、無報酬を表すそうです。一流のアーティスト、文化人らが多様性をもって新しい文化を作ろうとしている動きは、日本人の文化度を高める上でも価値のあることだと思います。

前夜祭の今日は、日本一の収容数を誇る名古屋城に隣接する「能楽堂」で、音楽動物園と題するイベントが開かれました。

太鼓奏者の林英哲さん、元宝塚宙組スター、姿月あさとさん、世界のプリマ、オペラ歌手の中丸三千繪さん、そして、ギタリストの布袋寅泰さんが、1時間半にわたって能楽堂の舞台上で演奏を繰り広げました。

オープニングは林さんの和太鼓が鳴り響きました。大きな和太鼓の正面が、月の表面のように見えました。林さんのダイナミックな演奏が、宇宙に向って太鼓を鳴らしているようにしか思えませんでした。背後に松の木が描かれる、素朴で伝統的な舞台上に宇宙空間が広がったのは、林さんの意識が遠い所にあるからかもしれません。今いる場所から、大きな世界や、宇宙空間まで意識して発信することの素晴らしさ、集中力を極限まで高めると、空間を変化させることができることを感じました。

また、目を閉じていると、戦国時代のような荒々しい、粗野で飾り気のない音だと感じました。和太鼓という単純にも見える楽器が、我々の祖先の生きざまを表現しているような気がしました。眠っていたものが目をさますような感覚。それは、伝統的なものに出会った時に味わう感覚です。

次は、宝塚出身の姿月あさとさんのオペラです。私は、宝塚の舞台そのものをみたことがありませんでした。宝塚の「宙組」は、姿月あさとさんのために創設されたとも言われています。姿月さんは本格的なオペラの訓練は受けたことがないそうです。女性の低音は、同じ女性に安心感を与え、清らかさのある空間になりました。プッチーニの歌劇を、少数のオ―ケストラ楽曲に編曲された神田慶一さんの整理力も発揮されていました。本物のオペラを見たことがないので、オペラのオーケストラの大きさがわからないのですが、膨大な楽譜をシンプルに書き換え、かつ本来の効果を損なわない楽曲にする仕事は大変な想像力、仕事力だと思いました。有名な「誰も寝てはならぬ」を聞いたときは、ぜひ、歌劇の舞台を全編みたいと思いました。

休憩を20分はさみ、第二部はいよいよエレキギターの登場です。布袋さんが、能の舞台の袖から、オペラ歌手の中丸さんをエスコートして舞台に上がられたときは、能の世界以上の迫力を感じました。生き方、情熱がそのまま姿になっているかのような布袋氏の立ち姿、主役になったかと思えば、すっと存在感をひそめて中丸歌姫を舞台の花にするスマートさ。一流の男の立ち方を見せてもらった気がします。エレキギターの音は、木で造られた舞台にやさしく吸収されたのでしょうか、クラシックの楽器のように聞こえ、子守唄のように心をおちつかせてくれました。一つ一つの音のゆらぎが極められており、そこにハートが加わって、いい音だなあと聞き惚れました。

 中丸三千繪さんは、1990年の第4回「マリア・カラス国際声楽コンクール」(RAIイタリア国営放送主催)で優勝されました。イタリア人以外で初めての快挙だったそうです。世界レベルのオペラ歌手の歌声をはじめて聞きましたが、体全体で、声を出す姿に驚きました。林英哲さんの太鼓の世界と同様、宇宙と一体化した人間の姿を目の当たりにしたようでした。布袋さんのギターと、世界的プリマの歌声が重なり合って、上り詰めていく感じは、星空を突き抜けていました。豊臣秀吉の時代の舞台と、それより未来の進化した日本人の融合は、歴史のダイナミズムすら感じさせられました。

時代やジャンルが異なった一流のもの同士の組み合わせは、本質を浮かび上がらせ、それぞれの美しさを際立たせます。

コンサルタントの神田昌典さんによれば、ハーバードビジネスレビューでは、「ビジネスマンはMBAでなくアートに学べ」と言っているそうです。人生でも、ビジネスでも、センスの良い組み合わせによって心を動かす世界を創造できることを実感しました。

アートに触れると、人間の大きさ、可能性に感動します。とてつもないスケールにも遭遇します。そういう意味で、アートに触れる時間は、人間に立ち返るための大切な時間と言えます。

実行プラン①:何かをするとき、宇宙に向かって発信している感覚を持ってみよう。空間はとてつもなく広い。

実行プラン②アートを見るために、積極的に足を運ぼう。自由な発想や人間を感じ取る時間は意識して持つこと。

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