2009年12月20日日曜日

COURRiER Japon(クーリエ・ジャポン) JANUARY 2010

             (西ドイツ、東ドイツ、ベルリンの位置関係:Wikipediaより)

最新号の『クーリエ・ジャポン』1月号は、ベルリン特集だ。表紙には、

ベルリンの壁に描かれる作品、熱烈に接吻をする男性政治家同士の姿が掲載されている。
(※ドイツの政治家ホーネッカー&旧ソビエトの政治家ブレジネフ


COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2010年 1月号 [雑誌]

2009年11月9日、ベルリンの壁が崩壊して、ちょうど20周年を迎えた。

記念式典にでは、サルコジ・フランス大統領、ブラウン英首相、メドベージェフ・ロシア大統領、

クリントン米国務長官ら欧米の要人や、民主化に貢献したゴルバチョフ、ワレサらが出席し、

盛大に祝われている。

本誌では、現地に足を運んだ脳科学者の茂木健一郎氏が

“壁”が意味するものについて感じたことを伝えてくれている。

(※茂木健一郎氏のブログにも、本誌の編集長らと共にベルリンを訪れた様子が描かれている:11月8,9日記事参照

ベルリンに関する記事は、下記タイトルでもわかるように、アート、人種、経済、身体といったアプローチで語られる。

一般的なメディアにはない、多彩な視点である。

●世界一刺激的な首都 新世紀ベルリン

・茂木健一郎、「壁」に触れる

・「ベルリンの壁」はこうなっていた!

・壁崩壊の立て役者らが語る「忘れえぬ1989」

・「ベルリンの壁よ、もう一度!」画家たちの壁修復プロジェクト

・ベルリンで激化する現代の「ユダヤ人狩り」

・統一20年後のいまも・・・格差が埋まらない理由とは

・東独スポーツ界の元アイドル“負の遺産”との終わりなき闘い

・よみがえる東独時代のアイコンたち

・世界のアーティストが集う街“新生ベルリン”へようこそ

・カルチャーシーンを牽引する先鋭たち

この中でも、ベルリンに世界のアーティストたちが集まってきているという記事が新鮮だった。

あるイタリア人アーティストは、“未完成の場所に身を置くことで、計り知れないパワーをもらっている”そうだ。

未完成で、発展途上だからこそ人が集まってくる街ベルリンは、活性化のさなかであることが伺われる。

“この街には物理的な空間の余裕があるだけでなく、精神的な余裕もあります。それが人を成長させるのです”

アーティストの創造性を刺激するような自由がある場所では、新しい価値が次々と生まれるにちがいない。

統一後のベルリンを象徴する建築物も紹介されており、
もとは駅舎だったハンブルガー・バーンホフ現代美術館や、ユダヤ博物館は、是非とも訪れたい場所だ。
この地を訪れれば、今までにないインスピレーションが得られそうな気がする。
壁崩壊後のベルリンは、そこに住む人、訪れる人によって新しく作り変えられてゆくだろう。

茂木氏は、ベルリンで、「人間そのもの」を次のように見出している(p43)。

“価値あるものは他にない。そして、それは世界のどこでも、いつでも、「壁」の向こうにあるものなのだろう。”

壁の向こう・・・

社会のあり方を考えるとき、我々は、まず、人間そのものに目を向けなければいけない。

人間とは、本来、お互い仲良くしたい生き物であると思う。表紙の接吻の写真もその象徴に思える。

しかし、まだまだ、取り払わなければならない壁が、物理的にも精神的にも存在するのだ。

以前、『クーリエ・ジャポン』で取り上げられていた、

鳩山由紀夫首相が掲げるアジア版“EU”構想、東アジア共同体。

果たして実現するだろうか。

東西ドイツの統合やEUを眺めるとき、

アジアの国同士が協力し合い、結びつくしくみは、実現可能だと思える。

そこで、アジア各国のニュースへと関心が向いた(p70~)。

そのニュースから、アジアがひとつになるには、どんな壁があるのかを伺い知ることが出来た。

また、様々な国で、人間の命や思想が、粗末に扱われているといわざるをえない事実

があるということも知ることができる。

例えば、インドは、1時間に13人が死亡する最悪の交通事故国らしい(p72)。

このニュースから、運転免許が簡単に取れる、医療体制が整っていない、

警察が機能していないという問題点が浮かび上がる。

また、在日外国人作家、姜誠氏による「エスニックメディアが見たNIPPON」 (p94)では、

“民主党の掲げる高校教育無償化を在日外国人はどう見ているか?”というテーマで、

在日外国人への教育サービスの充実が不可欠であるという意見が述べられている。

現在、高校教育の実質無償化構想では、

“各種学校”(学校法上「教育施設」を意味する)扱いの外国人学校にも適用される方向での検討がされているそうだ。

一方で、外国人に対する教育支援が軽視されてきた経緯があるという。

◆2003年、税制優遇措置を受けられる公益増進法人に外国人学校も含まれたものの、欧米型インターナショナルスクールに限定されたこと

◆ブラジル人学校など、ニューカマーの経営する学校にとっては、“各種学校”への許可申請のハードルが非常に高いこと。

日本国内では、今後外国人労働者の力に依存しなければならない場面が確実に増える。
見直しの余地がある分野であろう。
そして、そのまま中東のニュースへと目を向けると、
アフガニスタンを取材中にタリバンに身柄を拘束され、自力で脱出した、
『NYタイムズ』の記者デヴィッド・ロードの手記、“タリバン拘束記”(p74)が目に飛び込んできた。

真の姿を理解しようとするジャーナリストの命を脅かし、

身代金目的で拘束するタリバンとは、どのような組織なのか。
“タリバンと呼ばれているものは実際のところ、独立行動の多い地域の指導者が穏やかに結んだ同盟関係のことだというのは理解していた”
実態を見ることができない私たちでも、タリバンのイメージを持つことができる記述だ。
また、
“カブール市内および付近の誘拐事件の大半は、タリバンではなく犯罪組織によるもの”
というレポートでは、大きなニュースにならないゆえに、見逃していた事実を知ることになる。

あらゆる国において、法整備や成熟した民主主義体制がしかれるには、
国際的な支援や理解が欠かせないだろう。

まず、ジャーナリスト達が、世界中の現場を、信念を持ってレポートし、
真実を浮かび上がらせてくれていることに敬意を表する。

私たちができることは、その事実をもとに、解決策を考え、具現化させることであろう。

まずは、日常的な場面で、ひとりひとりの意思が尊重され、十分な話し合いがされる必要がある。

『クーリエ・ジャポン』は、多様な人が生きる社会には、独自の価値観が存在することを教えてくれる。

また、他者を正確に理解をしようとしないことで悲劇を生んでいることがわかる。
それでも人類には、命や基本的な欲求など、共通するものがしっかりあることに気づかせてくれる雑誌である。
尚、本誌は、レビュープラス様より献本頂きました。御礼申し上げます。

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