2010年1月14日木曜日

『中国報道の「裏」を読め!』富坂聰著

☆中国のリアルを知る方法
私は、2007年に中国の上海へ観光に訪れた。近代的な建物や、建設ラッシュに
経済発展のめざましさを感じた一方で、自動車の交通マナーの悪さにショックを受けた。
青信号で横断歩道を渡っていても車が平気で突っ込んでくるほどだった。

“ケンタッキーフライドチキン”はにぎわっているものの、ほとんどの人がフライドチキン
目当てではなく、ハンバーガーを食べに来ていたり、数日の滞在でも「なぜ?」のオンパレード。

中国関連のニュースを見ても、有名キャラクターが不恰好にコピーされたレジャーランドや、
ダンボール入り肉まんの誤報事件など「なぜ、嘘や偽物がまかり通るのか?」と疑問は続く。

こういった「なぜ?」の裏に、中国のリアルが隠されていることを教えてくれるのが

『中国報道の「裏」を読め!』(富坂聰著・講談社)である。

☆中国のリアル、メディア論、ビジネス書の要素が詰まった本!


中国報道の「裏」を読め! (COURRiER BOOKS)


『中国報道の「裏」を読め!』富坂聰(とみさか さとし)

本書の著者は、フリージャーナリストの富坂聰氏だ。中国関連のレポートで、富坂氏の
名前を目にした方も多いと思う。現在、雑誌『COURRiER JAPON(クーリエ・ジャポン)』
では、中国報道の背景を独自に分析した連載をされている。

ネット上の動画では、水道橋博士司会の、『博士も知らないニッポンのウラ 25 中国のウラ』
にゲスト出演されており、宮崎哲弥氏らと繰り広げる話が非常に興味深い。
海外ルポのジャーナリストというと、私は勝手に豪快なイメージを抱くが、予想に反して、スマート
な語り口の方であり、多くの中国エリート官僚達と信頼関係を築いているというのも納得した。

この番組内では「売春宿から閣僚まで」と評されるほど、幅広い現場を観察されているのも
富坂氏の強みだ。富坂氏がいかに中国裏事情に詳しいかがよくわかるので、合わせてご覧
いただくと面白いと思う。

動画:『博士も知らないニッポンのウラ 25 中国のウラ』(2008年4月)

さて、本書の特徴は、

一貫して「中国メディア」を通じた定点で、中国の変化を見続けているところである。
よって、中国の実態だけでなく、メディア論に興味がある人も新たな視点が得られる

例えば、あの「段ボール入り肉まん」報道は、なぜ捏造してまで報道されたのだろうか。それは、
中国のメディアが、庶民の悩みに同調し、視聴者の気を引こうとした結果だった。

“物価上昇に悩む市民が、豚肉の値段が2倍になっているのに、肉まんが値上がりしないこと
疑念をいだいている”という素地があったからこそ、「段ボール入り肉まん」報道はいとも簡単に
信じられてしまったのだ。

つまり、昨今の中国メディアは、国家権力ではなく、市場を気にしていることがわかる報道
なのである

中国のメディアといえば、国家がすべてを厳しく検閲し、都合の悪いことはずべて伏せてしまって
いるようなイメージがあった。もはやそうとばかりは言えないことが、この報道1つからも分かるのだ。

誤報や情報捏造の背景には、報道側に「或るモチベーション」がある。

それは「誰の目を意識したものか」まで考えると、

そのメディアの性質が見えてくるということに気付かされた。

◆“中国のリアル” を知ることは、日本人が我が身を振り返るきっかけにもなる

本書の目次を見て、一番気にかかった見出しは、
“「幸福指数」から見た中国人の生活実感”


である。
中国メディアである『広州日報』が、「GDPは膨れ上がったものの、中国人は幸せになったか?」
という問題意識を持ち、独自の指標を用いて測ろうとしている記事について、著者の解説が記される。

私は、中国は経済発展の最中にあるが、それだけでは幸せにはなれない、と早くも気づいた
メディアが、“国民総幸福量”(GNH)にも着目し、真の豊かさを問う姿勢に感心した。
貧困層や闇の部分を抱えたまま、アンバランスに成長している中国ならではの不安感なの
かもしれないが、拝金主義に疑問を抱く論調があるのは、希望が持てる部分だと思う。

また、日本人に足りない面を嫌というほど見せつけられるのが、中国の「起業家精神」についての
記述である。

本書では、“鶏口をめざす中国人”のエネルギッシュな発想に学ぶことが多い。

“中国では官僚がビジネスの世界に転身することを“下海”というが、海へ飛び込むその思い切りの良さは見ていて清々しい。官僚として培った人脈は徹底的に利用するが、組織に用意してもらったポストに天下って権力のおこぼれに与る(あずかる)という日本の官僚のような発想はない。”(p143)

“日本のサラリーマンは一生会社が保障してくれることが前提なので、会社の中でエリートコースとされている部署に行きたがる傾向が強いが、中国人の場合、できるだけさまざまな部署を回って各部署のノウハウを身につけようとする。それは自分が会社を経営するときのためでもあるし、会社が倒れても自分だけが生き残ることを前提とした発想だ。”(p143)


いかがだろうか。

中国人の独立志向を垣間見ると、日本はこのままでは、中国の勢いに飲み込まれてしまう、
という強い危機感さえ感じる。そして、日本人の甘ったれた依存型思考では、いずれ国際社会
でも生き残れなくなるであろう、という予感を抱く。

定められたコースでしか生きられないような働き方は、将来自分の首を締めることになる と肝に
命じなければならない。

このように、本書は、中国のリアルに迫ることができるだけでなく、

メディア論、ビジネス書としても読むことができた。

つまり、1冊で何とおりもの気付きが得られる本なのだ。

まずは1つの読み方を決めて、その後、改めて違った観点で読んでみることをお勧めする。
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(参考)本書に登場する中国の主要メディア


「人民日報」 「暸望東方週刊」 「環球時報」 「新京報」 「南方週末」 

広州日報」 「財経」 「中国新聞週刊」 

※各紙にどのような特徴があるかは、本書に解説ページがあるので、参照されたい。

☆中国のリアル&リスクをさらに知るために

我々が日常的に気になるのは、中国食品事情だろう。うっかり口にしてしまわないためにも、
読んでおきたい本が、同著者による『中国ニセ食品のカラクリ』だ。家族や自分の健康を守る
にも、「なぜ危険なのか」という中国の裏事情まで知っておかなくてはならないと思う。

中国ニセ食品のカラクリ


ここまできたら、中国のリアルを徹底して追求したい、という人は、
雑誌『Voice』2010年1月号を参照されたい。



Voice (ボイス) 2010年 01月号 [雑誌]

“中国のしたたかさ”を知る20冊~20年後を見据えた隣国にどう対するかというタイトルのもと、
櫻井よしこ氏と富坂 聰氏の対談が掲載されている。この対談で紹介されている20冊は、現場を知る
ジャーナリストが薦めているだけあって、骨太である。

例えば、岡部達味氏著『中国の対外戦略』(東京大学出版会)について、富坂氏は、“何が外交の核
であるかを見抜き、そこに向かって邁進する国家としての強さを感じる”と感想を述べ、“中国を考え
るとき、「自分たちと同じ思考で捉えてはいけない」という発想が重要”と説いている。

また、富坂氏が司会をされたという、『中国官僚覆面座談会』に至っては、テリー伊藤氏による
日本の省庁ルポルタージュ(例えば、『お笑い外務省機密情報』など)よりも、のけぞりそうな予感だ。

中国官僚覆面座談会 (Clickシリーズ)

さあ、あなたは、中国のリアルを知らないままで、この10年を過ごせるだろうか?

(※『中国報道の「裏」を読め!』は、レビュープラス様より献本頂きました。いつもありがとう
ございます!)

2 件のコメント:

シオ爺 さんのコメント...

『“メディア”を通じて、その国の内情の一部が理解できる』
凄い勉強になりました!!!

中国に関しては、「超高層ビルの合間に、ボロ屋がある」とか「宗教的な問題も含め、経済成長による、貧富の差(特に内陸部と沿岸部)、だからこそ、中国は年率二桁近い成長を遂げないと内乱が起る」とは聞いていましたが、情報源によって、色んな見方があるのですね。

もちろん、“自分自身のフィルター”って奴も大事なんですが、情報源ってのもかなり重要ですね。

『中国報道の裏を読め』
また、読んでみますね(^_-)-☆

BUSHIDOU さんのコメント...

シオ爺さん!コメントありがとうございます。

シオ様の言うとおり、今後貧富の差など、
国内事情により、今後大胆な経済政策がとられていきそうですよね。

メディアがそれをどう報じるかによって、国民の心理に与える影響が違ってくるので、メディアチェックが重要になるんですね(^v^)

確かに自分の感覚で中国を見て回れたら、本当は一番いいんですけど…(^^)。

中国と言えば、明日15日に映画『ハゲタカ』のDVDが出るので、“赤いハゲタカ”について認識するきっかけにしたいと思っていま~す!(^^)!

わからないところは教えてね!