2010年3月24日水曜日

『BRUTUS』元編集長斉藤和弘さんトークライブに行ってきた


名古屋ルーセントタワーにある、サイエンスカフェ・ガリレオ・ガリレイでは、夜の時間帯に、ライフとビジネスを科学する大人のサローネ「ACCADEMICO(アカデミコ)」が開催されています。23日のテーマは、BRUTUS元編集長が語る、「ファッション誌ビジネスモデルの賞味期限」でした。
BRUTUS (ブルータス) 2010年 1/15号 [雑誌]
雨が降りしきる中、ルーセントタワーに入ると、ムーディーな明かりの点るイタリアンバール風のサイエンス・カフェがありました。入って左手を見ると、談笑されている斉藤元編集長のお姿が。ここは六本木かと見まがうほどの洗練された空気が流れます。日常とは完全に切り離されて、イベントへの期待に胸が高鳴りました。

このアカデミコでは参加費にディナープレートが含まれています。ドリンクは、バーカウンターで注文し、開演前にイタリアンの盛り合わせを堪能しました。チーズや生ハム、アランチーニ(ライスコロッケ)も白身魚も美味。壁には、宇宙飛行士の写真、本棚には「Newton」や宇宙関係の書籍が並びます。カフェ内にはサイエンスシネマがあり、科学館とバーとカフェと大学が一緒になったような一歩先を行く空間でした。

☆雑誌経済の仕組みが分かった!

54歳とは思えないほどのセクシーさで壇上に立たれた斎藤和弘元編集長。
時代の最先端を作り出してきた英雄は、感覚的な話をされるのかと想像していたところ、非常に美しいロジックをお持ちでした。まず最初に、雑誌のビジネスモデルの成り立ちと動向についてのレクチャーを受けました。斎藤氏は、200ページの雑誌が、どのようなコスト、広告収入で成り立っているかを具体的な数字を挙げ、一連のストーリーとして語られました。お話を聴けば聴くほど、広告収入獲得のための戦略、ブランドを保つ上での心構えなどの話に引き込まれていきます。

雑誌のビジネスモデルは一言で言うと、リーマンショック後、「広告収入」増加が見込めない今、非常に危ういということです。その他、印刷会社は寡占状態で印刷コストが下げられない話や、取材コストは思った以上にかかること、儲かる雑誌とは、「発行部数が少なくて、広告単価が多いもの」という、独特のビジネスモデルにまつわる話など、非常に経済の勉強になりました。

☆未来予想のセンスを学んだ!

雑誌がネット社会の波にのまれている話にはじまり、クリス・アンダーソン著『FREE』の話へ。インターネットは、「いつでも誰もが便利で安く」を実現し、さらなる民主主義を実現しました。さて、皆が同じように同じようなもの・情報を手に入れることが可能になった今、人々は次に、一体何を求めるのでしょうか。そこには、「私だけのものがほしい」という欲求が生まれるというのです。斎藤氏は続けます。これからは、“人と違うものが欲しい”という世界がどんどん生まれてくる、と。

斎藤元編集長は、『casa BRUTUS』を創刊したことでも知られていますが、それも、人々が豊かになると、「衣・食・住」という順番でワンランク上のものを求めたくなるという予測をしていたからだそうです。世界的に有名の建築家の名前を一般に知らしめたハイクオリティな住空間雑誌として、独自の地位を築く雑誌は、斎藤さんの審美眼の賜物だったのですね。常に時代の先を読む力は、24時間雑誌の企画のことを考え続けた結果、生まれたものかもしれません。
Casa BRUTUS ( カーサ・ブルータス ) 2010年 03月号 [雑誌]
☆ブランディングの極意を知った!
後半の1時間は、質疑応答で盛り上がりました。30人弱という少人数ならではの濃い密度で双方向のやりとりができるのは、非常に刺激的です。編集長時代は、「怒らない、あきらめる」が信念だったとか、ラグジュアリーな時計ブランドのどこにも気を遣わなくてもいいように、Gショックの時計をしている(笑)
、という話など、こぼれ話も沢山。
そして、多くの人が知りたがった、「ブランディング」の方法。それは、一言で言ってしまえば、「違いをつくる」ということなのだそうです。売り方、見え方、顧客、どんなことでもいい、とにかく違いを作ること、そして、「競合はない」というところに行きついて初めてブランドなんだな、と思わされました。「エルメス」は「エルメス」でしかない、ということですね。

斎藤さんは、本当に楽しくてしょうがなかった雑誌作りの仕事を後進に譲るために、今は充電期間に入られています。常に仕事に充実感を見出してきて、今したいこと、それは、「個人の幸せとは何か」を探求し、感情を回復させることだそうです。
最後に、印象に残った言葉を一つ。
“雑誌とは、1つのストーリーを語るものと考えている。”
生き方も、2時間のお話も、さながら1つの物語を紡がれているかのような、ドラマを感じるひとときでした。
斎藤和弘さん、サイエンスカフェの皆様、夢のような時間をありがとうございました!
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☆斎藤和弘さんが読んでいる雑誌や書籍もろもろ

家庭画報 2010年 04月号 [雑誌]
自分の作った雑誌を含め、普段雑誌類を全く読まない斉藤さんが唯一読んでいる雑誌がなんと「家庭画報」!季節感があるのがお好きだそうです。私もたまに買っています。特に春の号ですね。
天皇の世紀〈1〉黒船渡来 (1977年)
※大佛 次郞(おさらぎ じろう)の歴史シリーズのようですが、私は読んだことがありません。これを機会に読んでみたいと思います。

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