2010年4月15日木曜日

『グーグルのグリーン戦略』を読んで~Googleは地球を救えるか~

環境関連事業というと「儲かりそう」と思っている人も少なくないのではないか。実際、タイトルに「グリーン・ニューディール」とある書籍をいくつか見てみると、ビジネスチャンスや投資先の話が中心となっているものが多い。

環境問題でも、お金になることばかりもてはやされるのでは、金融資本主義と実質的には変わらないのではないか。恩恵を受ける者が偏るのは問題である。
グーグルのグリーン戦略=

今回、レビュープラス様から献本いただいた新井宏征氏著『グーグルのグリーン戦略』には、Google社の環境関連事業が紹介されている。中心となっているのは、再生可能エネルギーに関する取り組みである。確かに、石油・石炭を原料としない次世代エネルギーは必要だと思う。21世紀半ばに全世界の人口が90億人に達するといわれている中で、限りある資源に頼り続けることはできないからだ。ただ、2050年代に人口が今の40~45%増えれば、食糧や住居、雇用といった基本的ニーズの問題が先立ち、まずこれらが満たされなければ、動乱や紛争が起こることも予想される。

☆世界を破壊させないために

4月13日から始まった核サミットでは、オバマ大統領が「冷戦終結から約20年過ぎたが、国家間の核による対決の危機は減少する一方、核攻撃の危険性は増大している」、「リンゴほどの大きさのプルトニウムが数千人を死に追いやり、世界を破壊させかねない」と述べている。核攻撃がおきれば、CO2削減による持続可能な社会どころの話ではない。

CO2を減らすなら、同時に核兵器を減らす努力が必要だ。CO2は減った、しかし核攻撃が起こった、では意味がない。

このような時代にあって、ITは、地球全体を平和で安全で住みよい環境に保つ上で、様々な貢献ができるのではないかと考える。例えば、今まで見えなかった地球の汚染の状況をデータや画像で、誰にでも見られるようにしたり、世界中に植林仲間を募ったりもできる。貧困諸国の食糧不足や核問題についての情報共有も、人々の意識を変えるだろう。

☆Googleの取り組みは十分か

本書では、2009年にデンマークのコペンハーゲンで開かれた「COP15(気候変動枠組条約締結国会議)」において、巨大なCO2キューブ(1000kgのCO2を表した箱型模型:右図参照)に、Youtubeのライブ討論が映し出されたことを紹介している(p12~参照)。


あとがきでは、著者は、twitterのハッシュタグ#COP15がついたコメントを読むことによって、日本に居ながらにしてCOP15をリアルタイムで感じることができた、と述べている。インターネットを通じて、人々が課題について意見交換できるようになったことは、有意義だと思う。




(CO2キューブの写真:the COP15 postより)
本書でGoogleのクリーンエネルギーについての5つの提案と取り組みを読んで、特に私が注目したのは、「クリーンエネルギー2030」(2030年までに石炭や石油によって発電される電力から脱却することを提案している文書)だ。その中の1つに、エネルギーインフラの再構築がある。本書の副題にある、"スマートグリッド"とは何か。たまたまサイエンスカフェで、「スマートグリッド時代の電力業界」というタイトルの講演が行われていたため、話を聞いてきた。

現状、アメリカでは、各地に中小規模の電力会社が点在しているだけで、停電も多く、日本のような電力の安定供給がなされていない。よって、スマートグリッド(=賢い送電網)が必要になるのだそうだ。日本では、電力の供給が不安定になることはほとんどないため、現存の送電網を再構築するなど、ピンと来ないが、ソーラーパネルで自家発電し、電力が余ったら、電力会社に売るシステムといえばイメージしやすいだろう。

GoogleCEOのエリック・シュミット氏は、スマートグリッド(次世代送電網)に触れたスピーチの中で、「電力網がインターネットのようになる」という主旨のことを述べたそうである(p107参照)。 これまで電力会社からの一方的な供給を受けてきた我々は、今後はインターネットと同様、双方向でエネルギーのやりとりが出来るようになる、ということなのだ。果たして、スマートグリッドをはりめぐらせることは、地球環境保護に効果的だろうか。

☆Googleに期待したいこと

私は、環境について、少なくとも3つの問題をセットにして考えるようにしている。

・ 温暖化(この原因の1つにCO2排出量の増加があると考えられている)
・ 廃棄物問題
・ 自然環境の破壊

簡単に言えば、CO2削減のためにしたことが、かえって廃棄物を増やしていたり、自然環境を破壊していたら、元も子もないということである。スマートグリッドで例えれば、送電網の再構築に伴う廃棄物が出るかもしれない。また、送電網が充実して消費エネルギーが増えると、再生可能エネルギーだけでなく、原子力エネルギーの需要も増えるのではないか、という懸念を抱く。

もっとも、私には、科学的な試算ができないため、答えを出すことはできないが、総合的に見ていくという視点は持ち続けたいと思う。

先にも述べたように、Googleが再生可能エネルギーの開発に取り組んでいることは評価できる。しかし、ジャック・アタリ氏は、『21世紀の歴史』(※1)の中で、太陽エネルギーや風力エネルギーは備蓄が可能になった場合に限り、有効な再生可能エネルギーとなる、という見方をしている。

今後Googleに期待したいことは、再生可能エネルギーの研究開発を進めながらも、核廃絶や次世代の教育にもさらなる貢献をしてもらいたいということなのだ

(※1:「サブプライム破綻」「世界金融危機」を予見し的中させ「21世紀世界を襲う5つの波」を予測する、世界注目の書。ジャック・アタリ氏は「欧州復興開発銀行」初代総裁にして、経済学者・思想家・作家であり、“ヨーロッパ最高の知性”と称される。)

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